無料のレンタルサーバーで事業用サイトを運用してはいけない理由
月0円でサイトを運用している人間が書きます。無料が悪いのではなく、規約の「商用利用禁止」と、あとで引っ越せないことが問題です。実際に引っ越せなくなった話をします。
私は自分の事業用サイトを、月0円のサーバーで運用しています。サーバー代は1円も払っていません。
それでもこのタイトルにしたのは、「無料」と呼ばれているものの中身が2種類あって、片方を選ぶと事業が育ったときに詰むからです。私は実際に詰みました。その話をします。
結論:問題は「無料」ではなく、規約と出口
先に結論を書きます。無料のサーバーを事業用に使うとき、確認すべきことは2つだけです。
- 規約に「商用利用の禁止」が書かれていないか
- あとで別のサーバーに引っ越せるか
この2つが問題ないなら、無料のまま運用して構いません。私はそうしています。逆に、この2つを確認せずに始めると、サイトが育ってお金が動き始めたちょうどそのタイミングで動けなくなります。
確認①:規約に「商用利用の禁止」が書かれていないか
無料のサービスには、利用規約で商用利用を禁止しているものがあります。そして「商用」の定義は、たいていの人が思っているより広いです。
私が使っていた Vercel というサービスの規約を、実際に引用します。
Hobby teams are restricted to non-commercial personal use only. (Hobbyチームは、非商用の個人利用のみに制限されます)
そして、何が「商用」に当たるかが具体的に列挙されています。
- サイトの訪問者に支払いを求める、または決済を処理する、あらゆる方法
- 商品やサービスの販売を宣伝すること
- サイトの制作・更新・ホスティングの対価を受け取ること
- アフィリエイトリンクがサイトの主目的であること
- Google AdSense をはじめとする広告の掲載
(Vercel「Fair Use Guidelines」より。2026年7月29日更新版を2026年9月16日に確認)
ここが怖いところです。「店の紹介を載せただけ」でも「商品やサービスの販売を宣伝すること」に当たります。 決済機能をつけていなくても、通販をしていなくても、事業の宣伝であれば商用です。
なお、同じページには「寄付を求めることは商用利用に当たらない」とも書かれています。線引きは事業性の有無であって、金額の大小ではありません。
これは「バレなければいい」話ではない
規約違反が見つかった場合、アカウントやデプロイが停止されます。つまりある日突然サイトが消えます。
自分のサイトが消えるだけなら、まだ自業自得で済みます。困るのは、そのサイトがお客さんとの接点になっている場合です。予約ページが落ちる、地図と営業時間が見られなくなる、名刺に刷ったURLが死ぬ。事業が順調に伸びているときほど、止まったときの損が大きくなります。
年1万円前後を惜しんで、事業の窓口を他人の規約の上に置くかどうか、という話です。
確認②:あとで引っ越せるか
こちらのほうが、実は厄介です。
私は2026年9月に、サイトを Vercel から Cloudflare Pages へ引っ越しました。サイトそのものの移転は、思ったより問題なく終わりました。
- 旧アドレスを消さずに、新アドレスへの転送専用として残した
- Google Search Console の「アドレス変更」を登録した
- アクセス解析を新しいサーバー側のものに入れ替えた
検索順位も、記事に貼られた古いリンクも、生き残りました。
引っ越せなかったもの
問題は、同じサーバーから配信していた有料アプリ2本のほうでした。こちらは移せませんでした。理由は3つです。
- アドレスがアプリ本体に焼き込まれている。 変更するにはアプリを作り直して、ストアの審査をもう一度受ける必要がある
- アプリを更新しない人がいる。 古いアプリを使い続けている人は、アドレスを変えた瞬間、動かないアプリを持たされる
- 保存データが消える。 これが決定的でした
3番目を補足します。ブラウザがサイトのデータを保存する仕組みは、アドレス(正確にはオリジン)ごとに分かれています。アドレスが変われば、ブラウザにとっては別のサイトです。だから引っ越すと、お金を払ってくれたお客さんのデータが、こちらの都合で消えます。
結果として、この2本は「次にアプリを更新するときまで、古いサーバーに置いたまま」という中途半端な状態になりました。
あなたの店に置き換えると
ゲームの保存データの話に聞こえるかもしれませんが、事業用サイトでも同じことが起きます。
- 予約フォームの送信履歴
- 会員のログイン状態
- カートの中身
- 問い合わせの下書き
こういうものは、たいていアドレスに紐づいています。サイトが単なる案内ページのうちは引っ越しが簡単で、機能が増えて、お客さんのデータを預かるようになった瞬間に引っ越せなくなります。
そして、無料サーバーを使い続けるほど、サイトは育ちます。育つほど動けなくなります。
では何を使えばいいのか
私が今使っているのは Cloudflare Pages です。無料プランのまま、事業用サイトを置いています。
無料プランの範囲は次のとおりです(2026年9月16日に公式ドキュメントで確認)。
| 項目 | 無料プランの範囲 |
|---|---|
| 転送量・リクエスト数 | 静的ファイルは無制限 |
| ファイル数 | 20,000ファイルまで |
| 1ファイルの大きさ | 25MiBまで |
| ビルド回数 | 月500回まで |
| 独自ドメイン | 1プロジェクト100個まで |
| SSL証明書 | 無料・自動 |
そして規約に、非商用に限るという制限がありません。これが Vercel との決定的な違いです。
公開するまでの手順はCloudflare Pagesで独自ドメインのサイトを公開する手順に分けて書きました。
Cloudflare も「無料なら何でもいい」わけではない
公平を期すために書いておきます。Cloudflare の利用規約にも、無料プランに対する制限があります。
process or collect personal or business credit card information on any web property that is receiving Free Services (無料サービスを利用しているウェブサイト上で、個人または法人のクレジットカード情報を処理・収集すること)
これは禁止事項として明記されています。つまり、自分のサイトの中で直接カード決済をするなら、無料プランのままでは駄目です。
もっとも、これは実務上そこまで痛くありません。決済はStripeやSquare、BASEのような外部のサービスに任せて、そちらのページへ送るのが普通だからです。カード情報が自分のサイトを通らなければ、この条項には触れません。
言いたいのは、推奨している側にも制限はあるということです。私の記事を含め、「無料で全部できます」と書いてあるものは疑ってください。
昔ながらの「無料レンタルサーバー」はどうなのか
ここまで書いてきたのは、私が実際に使った Vercel と Cloudflare の話です。
一方で、「レンタルサーバー 無料」で探すと、昔からある無料のレンタルサーバーも出てきます。こちらは私が契約していないので、使ってみた感想は書けません。 断定を避けます。
調べた限りでは、確認すべき点は同じ2つに加えて、もう1つあります。
- 規約で商用利用が禁止されていないか
- 独自ドメインを使えるか(使えないと、あとで引っ越すときに検索評価をまるごと捨てることになります)
- 運営側の広告が自動で挿入されないか
3つ目は無料レンタルサーバー特有です。自分の店のページに、自分が選んでいない広告が出ます。信用商売をしている業種では、これだけで選択肢から外れることがあります。
契約を検討している方は、その会社の規約ページで「商用」「広告」「独自ドメイン」の3語を検索してみてください。それだけで判断がつきます。
始める前のチェックリスト
無料のサーバーを事業用に使う前に、この5つを確認してください。
- 規約に「商用利用」「非商用」という語がないか検索した
- 事業の宣伝が「商用」に含まれるかを確認した
- 独自ドメインを使えることを確認した
- 運営側の広告が自動挿入されないことを確認した
- サイトに機能が増える前に、引っ越せる形になっているか考えた
最後の1つだけは、規約を読んでも分かりません。案内ページのうちに決めておくことです。
私は、そこを後回しにしたせいで、お客さんのいるアプリを動かせなくなりました。同じ失敗をする人が減ればと思って書きました。
よくある質問
無料のサーバーでも独自ドメインは使えますか
サービスによります。Cloudflare Pages は無料プランでも独自ドメインを1プロジェクトあたり100個まで設定でき、SSL証明書も自動で付きます。一方で、無料プランでは独自ドメインを使えないサービスもあります。契約前に確認してください。
趣味のサイトなら無料のままで問題ありませんか
問題ありません。この記事で挙げている2つの問題は、どちらもサイトでお金が動くようになって初めて表面化します。趣味のサイトで商用利用の規約に触れることはまずありません。
すでに無料サーバーで事業用サイトを運用しています。すぐ移さないと駄目ですか
慌てて移す必要はありませんが、規約は今日のうちに読んでください。そのうえで、商用利用が禁止されているなら移転の準備を始めます。急ぐべきなのは、止められたときに困る度合いが大きい場合です。